2011年4月


メラニンを含む角質

「メラニンを含む角質を落とす化粧品」というものがある。この表現を聞くたびに、ふきだしそうになる。メラニンを含む角質をAHAの化粧水などで拭き取ると、コットンが黒っぽくなる。

こんなCMが以前あったが、あれは意味があるのだろうか。

まず何かおかしいかというと、そもそも角質はメラニンを含んでいる。メラニンを含まない角質なんてない。

「メラニンを合む角質」と言うと、「あんこを含むあんパン」と言っているようで、何ともおかしな表現に聞こえる。

「この化粧品はメラニンを合む角質を落とします」と、わざわざうたい文句にするのを聞くと、「当店では、あんこを含むあんパンを売っています」というような話に聞こえる。

角質は、皮膚の代謝とともに、いずれアカとなってはがれる。シミ以外の正常な皮膚でも、常に多少のメラニンは作られており、それを角質がとりこんでアカとして捨てている(だからアカは黒い)。

つまり角質のメラニンは、わざわざ拭き取る必要はなく、いずれはアカとして落ちる。「こんなにメラニンがとれました」と黒いコットンを見せるのは、「黒いアカがこんなにとれました」と言っているのと同じである。

シミのメラニンは、角質のメラニンとは違う、深いところにあるメラニンである。ピーリングを繰り返すと皮膚全体の代謝が高まり、深いところのメラニンも徐々に排泄される。それがピーリングのシミ治療であり、アカをとることとは違う。

老人性色素斑にもかかわらず、思い込みたい「私は肝斑」

前項に挙げた内容をもとに、自分のシミがどれにあてはまるか、考えてみよう。

ただし、患者さんがこのようなものをもとにして、自分でシミ診断をした場合、なぜか正解率は非常に低い。

まず、自分のシミは「肝斑」だと訴えてくる人が最も多いのに驚くが、肝斑は、みなさんが思うほどポピュラーなものではない。

「頬骨のあたりに左右対称にできるシミが肝斑」と言われると、何でも肝斑に見えてしまうものらしいが、老人性色素腹だって頬骨のあたりからできることが多く、また、左右どちらか片側にというよりは、ほぼ対称にできることが多い。

やはり、女性が気にするシミは老人性色素斑が圧倒的に多いのだが、なぜ肝斑に人気が集まるのか。「老人性」という響きがまず嫌われる。

それよりは「女性ホルモンのでバランスの乱れでできる」と言われる方が、なんぼか耳にやさしい。また、レーザーでなく、できれば飲み薬で穏やかに消えてほしいという、潜在的な願望もあるだろう。そういう女心もあって、「肝斑」支持は厚いのだと思われる。

自分でシミの診断をつける自信がない人は、美容皮膚科を訪れよう。まずはシミの種類  を知らないと、対策もままならない。

美白化粧品の効かないシミに、延々と美白化粧品を塗り続け、何万円も無駄にしているケースが多いからである。もし老人性色素斑だと診断 されたら、迷わずレーザーでとってしまった方が、実は、早いし安いし確実である。


消える「シミ」と消えない「シミ」

まず、シミの種類を知ろう。ひと口にシミといっても、医学的にいうといろいろな種類がある。おおよそ以下のようなものである。

①老人性色素斑
いわゆる日焼けでできたシミ。茶色から黒褐色のものが、頬に丸くできることが多い。初期のまだ非常に薄いものは、美白化粧品でさらに薄くなることがあるが、完成してしまったものには美白化粧品は効かないので、レーザー治療が必要になる。進行するにつれ、皮膚の構造そのものが変化して、イボのように盛り上がってくることもある。シミとして最もポピュラーなもの。

②脂湿性角化症
①の老人性色素斑から次第にイボのように盛り上がってきた状態で、よく見ると、表面はボツボツとしている。手の甲などにできる茶色のシミもこれに相当するものが多い。このシミは、残念ながらレーザー治療でないととれない。

③雀卵斑(じゃくらんはん)
ソバカスといわれる遺伝的なもの。生まれつきこの遺伝子を持っている人は、10歳を過ぎたころから鼻を中心に、そばがらのカスのような小さなシミが散らばったようにできる。よく見ると丸でなく、ひとつひとつが三角や四角い形をしているのが特徴。皮膚構造は正常なので、美白化粧品は理論的には効くはずであるが、実際はなかなかそうはいかない。レーザーでとてもきれいにとれるが、再発することも。

④肝斑
女性ホルモンのづフンスが乱れるとできる、もやもやとしたシミ。頬骨の部分を中心に、左右対称にできることが多い。額や鼻の下にできるケースも。妊娠中、更年期の時やホルモン治療を行なった時などにできやすい。美白化粧品はある程度有効だが、トラネキサム酸の内服やピーリングの方が確実に効く。レーザーは不向きで逆に濃くなる場合も多い。

⑤炎症性色素沈着
ニキビ跡など、炎症がおきた後にできるシミ。コットンで拭き取るなど、肌をこする習慣がある人は、顔全体にこのシミができることもある。また、ムダ毛処理をしすぎて毛穴のところがポツポツ黒ずんでくるのもこのタイプ。美白化粧品はある程度有効だが、ピーリングを行なうと非常に早くとれる。レーザー治療は向かない。

トラネキサム酸一もともとは止血剤や抗炎症剤として使われる薬だが、メラニンの生産を抑える作用があるため、肝斑の治療にも使われる(美容皮膚科などで処方してもらえるし、市販のものもある)。肝斑の場合、トラネキサム酸とビタミンCをあわせて2、3ヵ月内服を続けると薄くなることが多いが、肝斑以外のシミにはあまり効果がない。

⑥花弁状色素斑
 海などで急に日焼けしたあとに、肩から背中にできる小さなシミで、よく見ると花びらのような形をしている。レーザー治療以外の方法でとるのは難しい。


美白化粧品の効果とは?

美白化粧品とは、何だろう。肌の奥にメラノサイトという、メラニンを作る細胞がある。

その働きを邪魔するのが美白化粧品である。これを忘れて、ただ漠然と「肌を白くするもの」が美白化粧品だと思っている人が多いが、それでは美白対策はうまくいかない。

美白化粧品とは、メラニンが作られるのを邪魔するものである。よって、皮膚構造は正常で、かつメラニンが過剰に生産されている状態、そういうときにしか美白化粧品は効かない。

皮膚構造そのものが壊れていたり、メラニンが過剰生産されてはいないが、ただ肌の奥に沈着してしまっているような場合、こういうシミには美白化粧品は効かない。

まず、シミにもいろいろ種類があることを知っておこう。種類によって、美白化粧品の効き方が造うからである

美白化粧品で、なぜシミは消えないか

美白ブームになって久しい。でも、実際に当院の外来にシミ相談にみえる患者さんに「美白化粧品を使っていますか」とお尋ねすると、「特には使っていません」というお答えが多い。

なぜかというと、シミが気になって、使ってみたんですけど、消えないからやめてしまいました。それで、レーザーでもしないとだめなのかしらと思って、受診してみました」ということである。

なぜこのようなことが起こるのか。女性が気にするシミの大半は老人性色素斑(紫外線でできるシミ)で、一度完成してしまった老人性色素斑には、美白化粧品は効かないからである。

美白化粧品は、あくまでメラニンの生成を妨げるものである。消しゴムではない。老人性色素毎においては、皮膚全体が老化して、構造が変化していることが多い。

美白化粧品は当然、この皮膚構造を元に戻す作用はないのだ。

例えば、ジャケットにシミがついたとしよう。生地自体が傷んでいなければ、シミ抜きで元に戻すこともできるだろう。

でも、タバコで焼いて黒くなってしまったとしたら、どんなにシミ抜きしても、元には戻らない。生地自体が傷んでいるからである。

老人性色素斑は、皮膚構造が変化しているから、どちらかというとタバコでこげた状態に近い。こうなったら、こげた部分の生地を切り取ってかけはぎで直すしかない。それがレーザー治療なのである。

「うっかり日焼け」は許されない

「うっかり日焼け」というものは、毎年たくさん見かける。うっかリビーチパラソルの下で寝てしまったら、ひどい日焼けになったとか、曇っていたので日焼け止めを塗らずにキャンプをしていたら、あとがら顔がひりひりして真っ赤になった、などのケースである。

「うっかリ日焼けをした場合は、どうすればよいか」という質問をよく受けるが、基本的にはどうしようもない。どうしようもないというのは、日焼けした肌のダメージを完全に回復する方浩は、残念ながらないということである。

天日干しにした干物を、生の魚に戻すことがで吉ないのと同じである。

もちろん、ヒリヒリして火傷のようになった場合は、冷やすなどの応急処置をした方がよい。さらに、広範囲に水庖がで吉たりした場合は、皮膚科へ行って塗り薬などをもらうべきである。

でもそれは火傷の治療であり、紫外線による肌老化を回復してくれるものではない。

白肌を守るためのパウダー活用法

日々の外出(日光に当たる時間)が2時間以下の人であれば、普段は日焼け止めは塗らないで、ファンデーションだけ塗っていれば十分である。

それもリキッドファンデーションよりは、パウダーの方がさらに肌にやさしいので毎日使うにはおすすめである。

あまりメイクをしたくない人は、白粉で、あまり色のつかないもの(ルースパウダーやフィニッシュパウダーなどという名で売られている)を使うとよい。

これらを使った場合は、クレンジングもしなくてよいから肌への負担は少ない。極端に敏感肌の人の場合は、この方法がUV対策としては一番よい。

シミは頬骨の高い部分から真っ先にできることが多いので、この部分に若干厚めにパウダーをのせるようにするとなおよい。汗などで崩れたら、もちろんつけ直すことが大事である。

リキッドファンデーションは、水を含むので防腐剤や界面活性剤などの添加物を含むものが多い。これらを毎日使うと、少しずつ肌を荒らす場合がある。

パウダーなどの固形物の方が、一般的にいって添加物は少ないので、肌への負担は少ない。

日焼け止めは「一長一短」

これまで述べてきたように、日焼け止めは、いろいろな問題点をかかえている。薄く塗れば効果がないが、厚塗りをすれば毛穴をふさいでしまう。

紫外線吸収剤はかぶれやすいが、散乱剤は白っぽくなる。汗でくずれると効果が落ちるが、ウォータープルーフは落ちにくいので肌が傷む。どれも一長一短である。

紫外線はもちろん肌に悪いが、日焼け止めもいろいろ問題があるので、うまくバランスをとって使わないといけない。使えば使うほどよいというものでもない。

最近はノンケミカルで優秀なものが出てきているから、使うならばそれらがよいが、それとても毎日顔に塗りたくってよくはない。

そこでおすすめしたいのが、パウダーファンデーションや白粉である。これらの肌色の粉には、紫外線を防ぐ効果がある。

いろいろなメーカーのものがあるので一概には言えないが、きちんと塗れば、SPF20くらいの効果は出るものが多い。特にSPF表示がない ものでも、である。

粉類は、肌にのせても中に吸収されるわけではないので、かぶれなどは起こしにくく、毎日塗っても肌への負担は少ない

SPF20と50はどの程度違うのか?

もうひとつ、日焼け止めについて驚愕の事実がある。

SPF20のものと50のものは、その効果には大差がないということである。紫外線防御力でいうと、SPF15以上のものは、これもほとんど変わらない。

どういうことかというと、例えばここにあるSPF20の日焼け止めは、紫外線の96%を遮断するとしよう。一方、SPF50の日焼け止めは、98%を遮断するとしよう。96も98もあまり変わらないような気がするが、透過してくる紫外線の量で見ると、4%と2%と倍も違う。この差が、SPFの差として表れてくるのである。

一時、SPF100などというものも出たが、上限が50に制限されるようになったのはそのような理由から、すなわち「数値が大きくなっても効果はあまり変わらないから」ということである。

薬局やデパートで売られている日焼け止めのほとんどはSPF15以上だから、日焼け止めの効果はほとんど同じということになる。

同じようなものでも、「肌にやさしい」というイメージで売りたい場合は15くらいに表示し、「最強」というイメージで売りたい場合は50などと表示されているというのが実情である。

ただし、50など、強めのものは主にスポーツ用やリゾート用なので、耐水性が強いなどの違いはある。

また、15などの弱めの表示がされているものは、敏感肌の人が使うことが多いから、添加物などもおさえめで、低刺激に作られているものが多い。

このような事情があるから、SPF値の高いものを使うとかぶれる人が多いのである。

日焼け止めを選ぶ場合、SPF値にはあまりこだわらず、肌への優しさを考慮において選ぶべきだということになる。

SPF値の落とし穴

「きちんと対策していたつもりなのになぜかシミが...」そういうショックを受ける人は、日焼け止めのSPF値を過信していた人に多い。

SPF値は2~50までの数値で表され、数値が高いほど紫外線B波の防止効果が高い(50以上のものは50と表示される)。

例えば20というと、何も塗らない状態に比べて20倍日焼けしにくいということを示す。20倍というと、大変な数値である。ましてや50管ともなると、ほとんど日焼けなどしないというイメージを与える。

しかし、ここで忘れてはならないのは、SPF値というのは、日焼け止めを1平方センチメートルあたり2ミリグラム塗ったときの数値として測定されているということである。

塗る量によって紫外線防止効果が違うのは当然のことで、規定量より少なく塗れば、当然効果は下がる。

平均的に、女性が日焼け止めを塗る場合、この5分の1程度しか塗っていないといわれる。逆にいうと、普段使う量の5倍は塗らないと、期待通りの効果は出ないということになる。

だから、「日焼け止めだけほとりあえず塗っています」という人に限って、40代くらいになるとシミが大量発生するのである。